若い頃、柄にもなくクラッシック音楽にのめり込んだ時があった。好きなのは、ショパン、ブラームス、ラフマニノフ...。
そんな頃、何気なく行ったコンサートで鳥肌が立つ演奏に出会った。 時は1989年11月、クルト・マズア指揮のゲバントハウス・オーケストラ。
演目は、ベート-ベン交響曲3番「英雄」。
ナポレオンに捧げるはずだったが、その皇帝即位に激怒して表紙を破り去ったという逸話がある。
指揮者のクルト・マズアは、東ドイツ民主化の旗手で、 おそらく逮捕を逃れるため、積極的に海外公演を行っていたようだ。
その途上の日本公演だったが、期せずしてベルリンの壁崩壊直後の演奏となった。
凍てつくような灰色の抑圧されたされた世界から、 暖かく鮮やかな花が咲き、生命の輝く春に。
そんな中での「英雄」。
革命とその旗手クルト・マズアへのオマージュ。
魂の震えるような感覚に、 音楽の持つ圧倒的な力を思い知らされた。
Le printemps en Europe de l’Est 東欧の春
